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第7章 かわりのもの

夢を見られない夜が続き、エルジェベータの顔色は日に日に薄くなっていった。 食事は減り、返事も短くなり、侍女が声をかけても、彼女は少し遅れて顔を上げるだけだった。 ある午後、侍女は静かに提案する。

「少し、外へ出てみませんか。風に当たれば、気分も変わるかもしれません」

エルジェベータは外へ出る理由を見つけられなかったが、部屋にいる理由もなかった。 馬車が用意され、街をゆっくり進む。 人々の声や荷車の音、生活の気配が途切れず流れているのに、彼女にはすべて遠く感じられた。 やがて一軒の家の前で、子供が泣いているのが見えた。親が背をさすり、何かを言い聞かせているが、子供は首を振り、同じ名前を何度も呼んでいた。

「飼っていた犬が、亡くなったそうです」

侍女が小さく説明する。 エルジェベータは黙ってその声を聞いた。 呼んでも来ない名前。 そこにいないものを求める声。 それは彼女の胸に深く残った。

翌日も同じ道を通ると、昨日泣いていた子供が笑っていた。 両腕に犬の形をしたぬいぐるみを抱き、大切そうに話しかけている。 死んだ犬が戻ったわけではない。 けれど、子供は泣きやんでいた。 「ご両親が、代わりに用意されたのでしょう」と侍女が言う。

「代わり……」

エルジェベータはその言葉を繰り返す。失ったものは戻らない。けれど、同じ形を与えることはできる。触れられるものがあれば、人は泣くのをやめられる。彼女は自分の手を見る。刺繍を覚え、裁縫を覚え、形を整えるために使ってきた指だった。

(作ればいい)

その考えは、驚くほど静かに生まれた。無理に思いついたのではない。最初からそこにあった答えを、ようやく見つけたようだった。馬車は進んでいたが、エルジェベータはもう外を見ていなかった。頭の中で、ロバの耳の長さ、目の位置、輪郭を何度もなぞっていた。