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第4章 なじんでいく夜

いくつもの夜が過ぎた。エルジェベータはもう、夢に驚かなくなっていた。ある夜はフォックストロットで滑るように広間を進み、また別の夜は古い宮廷のようなメヌエットを踊った。ダンスだけではない。広間の扉を開けると、月光でできた庭園が広がる夜もあった。池の水面に触れると音が鳴り、花びらを摘むと小さな星になって手の中で消えた。

ドンキィちゃんは、いつも彼女の少し前を歩いた。必要以上に導かず、置いていくこともない。エルジェベータが珍しそうに水面を覗き込めば、隣に立ち、花の名前を尋ねれば「この花はオルフィナ、今夜だけの名でございます」と答えた。その花が、エルジェベータは今まで見たどの花よりも美しく感じた。 彼女は現実で見せる作法の笑みではなく、声を立てて笑うことが増えた。

やがて夢は、現実よりも鮮やかになっていく。 昼の授業中、彼女は布に刺す糸の色を見ながら、夢の庭園に咲いていた花の光を思い出す。 社交界で誰かが話しかけても、その声は遠く、ドンキィちゃんの「お嬢様」という呼び方だけが、耳の奥に残っていた。

その夜の夢は、少しだけ違っていた。 広間ではメヌエットが流れていたが、音が妙に整いすぎている。一歩出す位置、腕を上げる高さ、すべてが正確で、周囲の動物の顔をした人々も同じ角度で動いている。エルジェベータは美しいと思った。 けれど、ふと自分の足を少しだけ遅らせると、ドンキィちゃんの手が自然に彼女を元の間へ戻した。

「……今のは?」と彼女は尋ねかける。 しかしドンキィちゃんは穏やかに「足元にお気をつけください」とだけ言った。床には何もない。音楽は続いている。美しさも変わらない。エルジェベータは気にしないことにした。ここは夢だ。現実とは違って当然なのだから。

目覚めても、その小さな違いは少しだけ残っていた。けれど彼女は窓の光を見ながら思う。多少おかしくてもかまわない。ドンキィちゃんがいるなら、それでいい。